咲かない花。

遅咲きでも狂い咲きでも良かったんだけど、なんか咲かないっぽい。それが私。

老婆の脇腹でもいい

 今朝トイレでオナラをしたら、童謡『むすんでひらいて』の「むーすぅんーでーひー」までのメロディを完全再現させることに成功しました。イエーイすごーい。こんな朝は日は何だか良いことがありそうな予感がします。洗濯機が壊れました。

 さて困りましたね。洗濯ができません。せめて洗濯板があれば当座はしのげたんですけどね。ないんですわ。痩せ老いた老婆の脇腹でもいいんですけど。デコボコした物ならこの際贅沢は言いません。

 でも形あるものはいつか壊れるのだとバーのマスターが言っていました。この洗濯機も購入から7年。寿命ですな。修理はせずこのまま永遠の眠りについてもらいます。今までありがとう。乾燥のたびに思春期をこじらせたポルターガイストのように暴れまくったことや、Yシャツのポケットに差したままのボールペンで全衣類を紫色に染め上げたあの日の事は不問と致しますよ。

 でも壊れるなら壊れるとあらかじめ言っておいてほしかった。昨日まで普通に出社していた中堅社員が今朝になって突然会社辞めますと電話してきたみたいなことですよ。

 肝臓、腎臓、膵臓。あなた達もね。何を『もの言わぬ臓器』とか言われていい気になっているんですか。気取っている暇があったら早めにヘルプの声を上げなさい。

 他人事みたいな顔をしていますけど下痢便あなたもですよ。肛門からの脱獄を試みるなら無理のない範囲で少しずつ余裕を持って脱獄しなさいよ。どこの世界に100人一気に脱獄を試みる囚人がいるんですか。インディー・ジョーンズじゃないんだからわざわざ大冒険にしないでくださいよ。

 幸いにして2日後に新しい洗濯機が届くことになったので、今日のところは奥さんと近所のコインランドリーに行くことにしました。コインランドリーなど20年ぶりですからね。ワクワクしながら中に入ったらハゲたおっさんが座ってましたよ。すいませんハゲは全然関係なかったです。誰もいないコインランドリーで奥さんと楽しくおしゃべり出来ると勝手に思い込んでいたものだからつい暴言が。

 いくつか設置されている洗濯機のひとつに洗濯物を放りこんで待つだけ。簡単です。でもひと抱えの洗濯機なのにいちばん大きい27kgの洗濯機を使ってしまったみたいで800円もするんです。高過ぎないですか? わたしのウンコ付きパンツを洗うのに800円。ついにわたしもセレブの仲間入りかー。

 新しく届いた洗濯機はおいでやす小田さんくらいうるさいです。カタログを見たら壊れた洗濯機の倍以上の運転音でした。買う前に確認すべきでした。すぐに届けてもらえる洗濯機ということで選択の余地がなかったのです。洗濯機だけに。ウフフ。

インスタントコーヒーが良いものに変わったら

 昔の原田知世さんの映画『彼女が水木にきがえたら』みたいなタイトルになってしまったけど、そういうこと。インスタントコーヒーを少しだけ良い物に変えてみたという話。オーよく見たら水着が水木になっている。イヤだ。彼女よ水木に着替えるな。

 食事の後のコーヒーを淹れるのはわたしの役目。役目といってもルールだからじゃない。奥さんがコーヒー好きだから。好きな人の好きな事をしてあげたいというわたしの愛の才能のなせるわざ。今も勉強中よSOUL。

 愛とは何か? 知らない。知りたくもない。それを知る事に何の意味が? 愛の何たるかを語れなくてもわたしは奥さんを愛している自信がある。言葉にする事が全てじゃない。

 ただ難しいのは、自分がそう思っていても相手には一切その愛が届いていない恐れがあること。だから言葉や態度での分かりやすい愛情表現が必要。その分かりやすい愛情表現が奥さんにコーヒーを淹れることだったりする。なんか打算的かなわたし。

 インスタントコーヒーはすごい発明。簡単だしそこそこ美味しい。もはやわたしにとってコーヒー=インスタントコーヒー。だからたまに手間をかけてドリップコーヒーを淹れてみても、香りはともかく味は分からん。

 『ネスカフェ プレジデント』という小さい瓶に入って1,000円くらいするインスタントコーヒーを買ってみた。今までのコーヒーは何かでっかい瓶に入った茶色い粉で、お湯を注ぐと泥みてえになる汁だった。すごく安い。

 うーむうまい。プレジデントうまい気がする。気分はまさに大統領。アメリカの。執務室で飲む至高の一杯。このコーヒーを飲み終えたらアイツらを呼ぼう。スペースシャトルに乗って地球に迫っている小惑星を内側から核で爆破して人類を滅亡から救ってもらおう。

 人類を救うって。この地球上には人類以外の生命がいないとでも思っているのか? そういうところに人間の思い上がりが見え隠れして気分が悪い。でもわたしだってきっとそんな時に近所の猫畜生がどうなろうと関係ないから傲慢な人類の一翼をしっかりと担っていたようで残念至極。

 プレジデントすぐなくなる。奥さんとわたしに加えて最近は高校生の娘も調子ブッこいてコーヒーを嗜んだりするものだから減りが早い。買って一週間もしない内にもう半分なくなった。どうしよう。ココロは豊かになるけどフトコロが途方もなく寒い。

 あゝ。ココロがフトコロならいいのに。

整形したいと言い出した

 大学2年生になる知人の息子さんが、目を整形して二重にしたいと言い出した。まぶたにノリを塗ったりテープを貼ったりする毎日に嫌気がさしたらしい。

 知人は我が子の整形には反対の立場を表明している。「必要ない」「ありのままの自分でいれば良い」が知人の主張。

 同意しかねる。わたしだってキリストに「必要ないのですよ」と優しく言われても絶対にパンツは履くし、ブッダに「ありのままの自分で良いのですよ」と目を見て諭されてもハゲればヅラを被る自信がある。むしろ謎の自負すらあったりする。

 もしわたしが『必要ないから』『ありのままの自分で』などという理屈でパンツも履かずハゲ散らかして天下の往来を歩いていたら、それはただわいせつ物を陳列しているだけの変態だ。ごめんハゲは関係なかったわ。

 キリストやブッダに責任が取れるのか。教典に変態を救済する教えが? あなた方は聖人と崇め奉られているが、わたしは性人と蔑まれて今世に寄る辺はなくなる。全く割に合わない。

 閑話休題。なぜか二重の整形から変態の話になったので本題に戻す。

 必要がないかどうかは本人にしか分からない。ありのままの自分にコンプレックスを抱えて生きるなら、整形して心穏やかでいられる方が良い。法に触れず他者に害を及ぼさないのなら本人の自由にすれば良い。

 

 その日の夕食時。

私「で、知人にはそう言ってやったわけよ。昔とは感覚が違うんだからってね」

娘「へぇー理解あるね。でもその息子さん、埋没式と切開式のどっちにするんだろうね?」

私「何が?」

娘「整形のやり方。わたしなら埋没式がいいかな。切開式に比べて経年劣化が早いけど、簡単で費用も安めだし。何よりやり直しが効くってメリットは大きいよね」

私「……なんかキミ、やけに詳しくない?」

娘「そお?」

私「え、もしかして整形したかったりする?」

娘「うーん。今すぐじゃないけど、そのうち出来たらなあって思ってるよ」

私「必要ない。ありのままの君でいい」

娘「ないわーこの人」

 メーデーメーデー。そんな話は聞いてない。どうしよう娘のメガ。いや娘の名画。いや娘の姪が。いや娘ノゲイラノゲイラ? 総合格闘家の? 娘がノゲイラはちょっと勘弁。

 娘が整形したいと言い出した。どうするわたし。ついでにどうする家康。

わたしのプライド

 わたしは今、『ザ・シェフ』という漫画がものすごく読みたい。全巻所有していたが以前に売ってしまった。

 

 でもそんな事よりわたしは今、PRIDEにおいて今井美樹さんが見上げて誓ったという『南の一つ星』の正体解明に心血を注ぎたくなっている。

 

 そしてわたしは今、南の一つ星が『みなみの魚座α星フォーマルハウト』という一等星を指すらしい事を知った。

 

 アキボシ、フナボシ、ヒトツボッサンとも呼ばれるこの星は、地球から25光年の位置にあり、天文学的には比較的近くにある恒星らしい。

 

 と言う事は、今井美樹さんは隣町に住む親戚の伯父さんに電話で「どんな時も微笑みを絶やさずに歩いていこうと思うの」と誓ったというイメージで相違ないだろう。

 

 伯父さんにしてみれば何のこっちゃ分からん主張だったに違いないが、かわいい姪っ子からの電話なので「美樹の好きにすればええ」くらいの事は言ったのではないだろうか。

 

 そしてわたしは今、ふと若かりし頃の合コンでの出来事を思い出す。「今井美樹さんといえば何色のイメージ?」 と聞かれて何となく「青」と答えたら「え、青じゃなくて白じゃない?」と女子たちから総スカンを食らった。

 

「うるせえなバカ。別にお前らに嫌われたって痛くもかゆくもねえんだよ。つーか逆にお前らと同じ感性を持っていなかった自分を褒めてやりてえ。あと今井美樹さんが白ならお前らはドドメ色だからなクソババアどもが」と言ってやりたかったが、実際に出てきた言葉は「あーへっ」だった。

 

 とても悔しかったので、その後で鍋が出された時に女子たちから「やっぱ鍋にはポン酢だよねー」と話しかけられたけど「イヤオルァポンズダイッキルェダカルァ」と巻き舌で返した。

 

 そしてそのあと二次会で行ったカラオケで女子の一人が歌ったアン・ルイスの『あゝ無情』にも、一切の合いの手を入れないという掟破りの無慈悲な攻撃もお見舞いした。

 

 近世史上稀にみる最低最悪な雰囲気の合コンとなり、ウフフな状況になった時に備えていつもより3枚ほど多く忍ばせていた諭吉が活躍する事はついになかった。

 

 でも後悔はしていない。女の子に好印象を持たれるために自分を偽る事などしない。それがわたしのPRIDEだ。

その1秒がなぜ待てない

「あのひとどうしていっちゃうのかなぁ?」

「きっとおうさまなんだよ!」

 

 わたしが信号待ちをしていた時に、横にいた幼稚園児くらいの女の子たちが言った。

 言葉の向かう先には、信号を無視して横断歩道を渡って行った中年男性がいた。

 信号を無視できるあのおじさんは、きっと王様くらい偉い人なんだという、彼女たちなりの理解かな。

 

 常々思うんだけど、人って信号を守らないよね。

 さっきのおじさんみたいに、赤信号を堂々と渡っていくような人もそうなんだけど。

 例えば赤から青に60秒で変わる信号があったとして、59秒まで待ったのに残りの1秒で渡っちゃうような人。結構いる。何でその1秒が待てないのっていう。

 

 だって1秒だよ。『時は金なり』とは言うけれど、この1秒の短縮が人生においてどれだけの意味を成すのか。秒で億を稼ぎ出すイーロン・マスクでもないのに。

 そのイーロン・マスクだって、59秒まで待ったのに残りの1秒で渡っちゃえば信号無視。王様おじさんと一緒。

 

  家から会社まで1時間かかるとして。行ってきますと同時に脱糞してそのまま通勤しちゃうのが王様おじさん。会社に着く1秒前で惜しくも脱糞しちゃうのがイーロン・マスク

 ね? 一緒なんだから。何も変わらない。王様おじさんもイーロン・マスクも等しくすべからくウンコ漏らし。

 

 いつの間に信号無視がウンコ漏らしの話に。ちょっと疲れてんのかもしんない。わたしのことはどうぞ無視して。

ジジババは同じ話を何度もする

 ジジババの話をしたい。

 ジジババとは魔女の宅急便のジジのババなどという、およそジブリ映画からは掛け離れたスカトロジーの類ではない。言うまでもなくお年寄りを表すジジイとババアの意だ。

 ジジババは同じ話をする。いつも何度でもする。「その話は前も聞いたよ」という事が幾度となくある。

 だいたいはジジイの「昔は俺もちょっとしたワルだった」と、ババアの「昔はこれでも小野小町の再来と言われていた」とか閻魔に100万回ベロを引っこ抜かれても文句も言えぬ不届きな嘘と相場は決まってる。

 嘘と決めつけるのは良くないが、でもあなた方の言う事を額面通りに受け取るのであれば、日本全国津々浦々、ちょっとしたワルと転生した小野小町だらけになってしまう。

 年齢を重ねていくと新たに作られる思い出が少なくなるので、必然ジジババは過去の思い出に浸る事が多くなるのだろうか。だから事あるごとに昔話を何度も反芻して語るのか。

 

 わたしが一つ決めているルールがある。ジジババが何度同じエピソードを披露しても「その話は前に聞いた」の一言は絶対に言わない。何度でも、まるで初めて聞いたかの様な新鮮な反応で聞く。

 ジジババをボケ老人扱いしているわけではない。彼らの昔話は、そのまま彼らの歴史だからだ。人の歴史を「前に聞いた」の一言で片付けたくはない。だから敬意を払って何度でも聞く。

 多くのジジババは、恐らく犯罪に手を染めず真面目に懸命に生きてきたはずだ。ジジババは若者が思うより簡単に老害と一刀両断してよい存在ではないと思う。

 

 でもジジババが昔語りを始めると、いつも義妹が「その話は前も聞いたよ!」の一言で切り捨ててしまうから、わたしはいつか義妹に肩パンチをお見舞いしようと思う。

駅の改札で、平和をさけぶ

 わたしの前を歩いていた東南アジア系の男性が、改札の前で急に歩みを止めた。

 持ち前の反射神経で何とか衝突は避けられたが、軽くイラッとした。

 男性はゆったりとした動きでバッグからSuicaを取り出し、読み取り部にタッチした。

 改札ゲートが開いた後も、男性はすぐには動かなかった。まるでタッチの余韻を楽しむかのように2秒ほど佇んだあと、おもむろSuicaをバッグに戻した。

 そして何事もなかったかのように、悠然と改札を通過していった。

 

 この間、約7秒。すっげえイライラした。

 遅い。Suicaなど改札に着く前にあらかじめ準備しておいてくれ。

 なぜSuicaのタッチに余韻を感じているんだ。新手のプレイか。改札の読み取り部にSuicaをタッチすると、それはそれはえもいわれぬ快感が押し寄せてくるタイプの人物か。

 あなたの性癖をとやかく言うつもりはないが、朝の通勤時間だぞ。後ろがつかえているんだ。さっさと改札を通過してくれ。

 

 後ろで待たされている間、上記のような文句に加え、文字に起こせないような罵詈雑言を呪詛のように唱えていた。

 でも途中で考えを改めた。

 この人には何ら悪気はないんだと。きっとゆったりしたお国柄の人で、文化や慣習が違うだけなのだと。わたしの勝手な思い込みで、安易に真実を歪めてはいけないと。

 

 そんなふうに自省しながら、男性に続いて改札を通過したわたしが見たものは、ほぼ滑落してるよねくらいのスピードで階段を駆け下りてゆく、さっきの男性の姿だった。

 つもりを教えて。その超絶スピードで階段を駆け下りたあなたが、なぜさっきの改札はあんなに遅かったんだ。折り合いがつかない。もしかして本当に滑落してただけだったのか。

 

 いや、もう忘れたか。さっき自省したばかりだ。勝手な思い込みで真実を歪めてはいけない。

 きっとこの人の国では、改札はゆっくり、階段は滑落という慣習なんだ。そうなんだ。きっとここから愛なんだ。

 相手を理解できたことで、何だか世界平和の第一歩を歩み出せた気がする。