咲かない花。

遅咲きでも狂い咲きでも良かったんだけど、なんか咲かないっぽい。それが私。

行列の先のサイババ。

 行列があると、そこに並びたくなるのが人の性というものなのかもしれない。

 行列に並ぶ人たちにとって、行列の先に何があるのかは重要ではない。もはや行列に並ぶという行為そのものに価値を見出しているからだ。行列の先が汚物にまみれた公衆トイレだろうと加齢臭を放つくたびれたオヤジの耳の後ろだろうと意に介さない。それが行列。たぶん。

 だから義母が事あるごとに「あたしが並び始めると必ず行列が出来るのよぉ」と嬉しそうにのたまうのは単なる思い上がりに過ぎない。一介の後期高齢者ごときにそんなミラコーなパワーがあってたまるか。本当にそんな能力を有しているのなら闇の組織が放ってはおかない。今頃は追手からの逃避行に身を投じていなければおかしい。でも義母はさっきもリビングで芋ようかんを食べていた。怖いくらい平和。従って義母に行列を生成する能力はない。

 行列といえば先日、駅前にあるスーパーの入り口付近に行列が出来ていた。別に行列など珍しくもないけど、その行列は少し様子が違っていて。行列に並んでいる全員がモンゴルの騎馬軍団さながらに自転車にまたがっていた。

 行列の先頭に定年を過ぎたくらいのおじさんがいたから、自転車のタイヤに空気を入れてもらいたい人達の行列かとも思ったけど、そうでもなさそうだった。

 もしかすると先頭のおじさんが著名な方じゃないかと目を凝らしたけど、普通のオッサンに戻る必要もないくらいに普通のオッサンだったので、この説は速攻で棄却した。

 いくら考えても行列の理由が分からなかったので、あのおじさんはインドの聖人サイババで、みんなビブーティ欲しさに自転車で行列しているのだと思うことにした。なぜサイババなのかは自分でも分からない。分かる必要もない。